事故後から示談までの流れ

事故後、「保険会社とのやりとり」「治療通院」「示談交渉」と被害者がやらなければならないことは山積みです。保険会社も懇切丁寧に教えてくれるわけではないので、何をどこから始めていいのか途方に暮れている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

ここでは事故後から示談までの流れをご説明いたします。

交通事故の示談交渉のイメージ

1. 加害者の自動車保険会社から連絡が来た!これからどうする?

事故現場で、加害者に自分の連絡先等を伝えたかと思います。加害者は、この情報をもとに加入している保険会社へ連絡し、保険の利用開始を伝えます。大体、加害者が保険会社に連絡してから1週間程度で、被害者に保険会社から連絡が来ますが、連絡が来ない場合にはこちらから、事故時に加害者から教えてもらった保険会社へ連絡してみましょう。

保険会社からは「物損担当の○○です」とか「人身担当の○○です」という形で連絡が来ます。
保険会社では、1つの事故に対し1人が担当というわけではなく、担当が物損部分と人身部分に分かれているためです。物損と人身は完全に分けて示談になりますので、物損担当者に人身部分の賠償について質問しても把握していないためわからないですし、そのまた逆もしかりです。

人身担当からは、「どちらに通院されますか?」とか「お仕事のお休みはないですか?」とか聞かれることかと思います。こういった質問にはきちんと答えておく必要があります。答えておかないと、治療費などを支払ってもらえなくなってしまいます。保険会社から届いた資料も同様で、中身をよく確認し、早めに保険会社へ提出してください。

ただし、保険会社から「示談書」「免責証書」に間違ってもサインをしてこの段階で提出しないようにしてください。
示談書や免責証書を取り交わしてしまうと、示談交渉に同意したことになり、書面に書いてある費用だけしか請求できなくなってしまいます。示談書や免責証書を提出するのは、本当に最後の最後です。

2. 怪我の治療だけじゃない!物損の対応も

怪我を伴う事故の場合、治療に専念したいとは思いますが、物損の対応も行わなければなりません。

示談には2つあります。「人身事故に伴う示談」と「物件事故に伴う示談」です。
「人身事故に伴う示談」とは、事故によって被った怪我に対する損害賠償を指します。治療費や入通院治療等により仕事を休んだために、もらい損ねた収入を請求する休業損害費用、慰謝料等がこれに含まれます。
「物件事故に伴う示談」とは、いわゆる物損事故の示談を指し、事故で壊れた車の修理費や車載物の賠償費用、修理中に借りた代車の費用等がこれに含まれます。

物損事故の損害賠償は、「全損扱い」にするか「修理扱い」にするかによって内容が異なります。
「全損扱い」はいわゆる廃車扱いにすることで、修理費の代わりに同等車両の時価額をもらい示談にする方法です。
全損には「物理的全損」と「経済的全損」があり、「物理的全損」はもう直せない修理不可の物を指し、「経済的全損」は車両の時価額、車検残存費用等の諸費用が修理費よりも大きくなってしまう物を指します。

壊れた車を修理工場に出すところから示談交渉から始まります。
修理にかかる見積もりをディーラー等に出してもらい、全損扱いにするか修理にするかじっくり保険会社と話し合いましょう。修理の場合は、その間の代車費用も請求できます。

また、車載物や事故によって壊れてしまった時計や衣服等も「物件事故に伴う示談」の際に請求できます。
こういった費用は、物損事故の示談後は、人身事故に伴う示談が終わっていないとしても、支払をしてもらえなくなりますので、物損事故の示談の際には忘れずに請求する必要があります。

基本的に、人身事故に伴う示談よりも物損事故の示談が先に行われます。
物損事故の示談で決まった過失割合が、人身事故に伴う示談の際にも適用されます。したがって、物損事故示談時には、過失割合をキチンと確認しておく必要があります。
過失割合に納得いかないのであれば、そのまま示談はせず、自分の保険会社や弁護士等に相談することをお勧めします。

3. 治療の開始

事故後、一番早く始まるのが、怪我の治療です。

過失割合でよほどもめていない限り、加害者の保険会社が治療費を病院に支払ってくれます。
そのため、保険会社から「どこの病院に行きますか?」と聞かれた場合は、必ず、事故の怪我のために通院する病院はすべて保険会社に伝えましょう
また、転院や新しい病院に行く場合にはその都度を保険会社にその旨を伝える必要があります。保険会社は病院へ被害者の同意書等なしには照会ができないためです。

病院名を伝えると、保険会社は「同意書」と記載されたものを送って来ます。
これは「治療費の支払いのため、個人情報を病院から開示してもらってもいいですか?」という内容のものになります。しっかり文章を確認したうえで必ず、保険会社へ提出しましょう。
これがないと保険会社は病院にカルテ等の請求ができず、治療費の支払いができなくなってしまいます。

入院や手術をする方、毎日の通院が必要になる方、治療の方法は様々です。怪我の状態にもよりますが、よほどの重症でない限り3か月から半年程度治療を行います。お仕事の関係で通院がつらい方もいらっしゃると思いますが、医師と相談しながらこつこつ根気よく治療しましょう。治療を途中でやめてしまうと保険会社が「もう治療しなくてもいいんだ」と認識し、治療費の支払い打ち切りを提案してきてしまいます。
体のためにもきちんと通院しましょう。

4. 症状固定から後遺障害の申請

どんなにまじめに治療を受けても、治療には限界があります。
軽度の怪我ですと治療から半年程度すると「治癒」または「症状固定」という時期を迎えます。
「治癒」はその名の通り、怪我が治った状態を指示しますので、これにて治療終了となり、あとは最終の示談交渉に望むだけです。

「症状固定」は、これ以上、治療しても回復が認められないという状態を示します。つまり、何かしらの症状が残ってしまった状態です。症状固定という状態になると、「後遺障害」というものを考えなくてはなりません。後遺障害とは、事故によって負った怪我が一定程度治療したけれど治癒せず、残ってしまい、労働能力に支障をきたすので、障害として認めてもらうというものです。

後遺障害の認定には2つの種類があり、任意保険会社がすべてやってくれる「事前認定」と被害者側で申請する「後遺障害申請」の2つがあります。
「事前認定」は保険会社がすべて資料を整えて自賠責保険に提出してくれますので、簡単ですが、何を出しているかは被害者本人はわかりません。
一方、「後遺障害申請」被害者が自ら申請を行いますので、納得のいく資料を出すことができるというメリットがあります。
どちらで申請をするかは本人次第ですが、申請をして後遺障害であると認められると、治療費や入通院慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」「逸失利益」という損害賠償費用が認められます。
治療後何かしらの症状が残っている場合には後遺障害の申請をしておくことが無難です。

事故から後遺障害認定が終わるまでにだいたい1年を要します。

5. 人身部分の示談交渉

後遺障害の認定が終わると、ようやく人身部分の示談交渉に突入します。
示談交渉では、これまでにかかった治療費や途中で支払ってもらった費用を除く、保険会社が未払い分の費用を一気に請求をします。請求の費目としては、

  • 付添看護料
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 逸失利益(後遺障害認定時)
  • 後遺障害慰謝料(後遺障害認定時)
  • その他、治療等にかかった費用

この8つの項目が挙げられます。

これらのもととなる情報は、これまでに保険会社に届け出た情報です。きちんと保険会社に連絡がなされていなければ、適正な金額がもらえないため、被害者が損をすることになってしまいます。
保険会社から逐一「領収書はないですか?」とか「休業のための損害はないですか?」と聞かれたり、資料が送られてきて正直、厄介だと感じるかもしれませんが、どれも示談には必要な情報です。出すべきものは出して、きっちりと損害賠償を受けましょう。

示談金がある程度確定したら、「示談書」もしくは「免責証書」というものが保険会社から届きます。
これらには示談額のみが書いてあるだけという場合があります。これだけでは、本当に適正な金額が支払われているかわかりません。詳しい明細がついている場合は明細をきちんと確認しましょう。明細がない場合は保険会社に詳細を教えて欲しい旨を伝えましょう。

また示談額が少ないと思ったら、保険会社に交渉しましょう。
自分では交渉が難しい、いくらが相場なのかわからない場合は弁護士に相談してみるのも1つの手です。
保険会社は裁判所基準支払額の8割の金額を保険会社基準として提示してくることが多くあります。少しでも多く示談金がもらえるように、示談額に疑問を思ったら弁護士に相談してみましょう。

最終的に示談額の合意がなされて、示談書等を取り交わせば、あとは保険会社からの示談金の入金を待つだけです。
示談金の入金がなされてようやく終了となります。
短い方ですと、ここまでくるのに約1年半、長い方ですと2年以上かかる方もいらっしゃいます。

6. まとめ

ここでは、事故後から示談までの流れを説明してきました。
思った以上にやることが多いなと感じたのではないでしょうか?

事故後から示談金が入金されるまで、物損のみの事故であれば半年程度、人身事故であれば、最低でも約1年半を要します。治療しながらこれだけ多くのことを考えなくてはならないことはとても大変です。
自分だけでは保険会社に交渉できるか不安、きちんと示談金を受け取りたいと思ったら、弁護士に相談してみることをお勧めします。

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