交通事故の治療費用はどこまで請求できる?

怪我の治療は日数とお金をかければかけただけ治癒に近づくもの。
高額な医療費がかかる治療は支払ってもらえるのか?保険会社はどこまで支払ってくれるのか?保険会社に請求できる治療費用についてご説明いたします。

 
交通事故の治療

1. 病院にこんなに通っていいの?

交通事故後、最も時間をとられるのが、怪我の治療です。
1つの整形外科にだけ通院するという方がほとんどかと思いますが、事故によっては、整形外科だけではなく、治療のため眼科や脳外科など複数の病院に通わざるを得ない怪我を負ってしまうことも多々あります。
また、当初通っていた病院から、「これ以上の治療はここではできないから、ほかの病院へ転院してください」などと言われ転院を余儀なくされることもあります。
長い期間、治療のための通院している中で、医師からは「まだ治療が必要ですから通院してください」と言われ、「保険会社が治療費を負担してくれるとはいえ、こんなに長い間通院をしていいのだろうか?」「長期にわたり治療費を支払ってもらった分、示談金から差し引かれてしまうのではないか?」と不安になる方も多いのではないでしょうか?

結論から言えば、医師が保険会社へ「症状固定ですよ」と言わない限りは通院、入院に関する費用は保険会社へ請求できると思ってください。治療が長引いたからと言って示談金から差し引かれることもありません。
怪我の治療には、ムチウチ症ですと最低半年以上、重症になると1年以上の期間を要すことになります。この間にかかった保険料は保険会社が全て負担し、支払ってくれます。
基本的に、交通事故を起因とする怪我であり、医師が必要と認めた治療のための通院であれば、いくら転院しようが、いくつの病院に通おうが、「症状固定」と医師が認める日までの費用が請求できるのです。

ただし、これには注意が必要です。
転院や新たに病院へ行く場合は、事前に転院する旨や新規の病院へ行く旨を保険会社に連絡しなくていけません。連絡しておかないと、保険会社が病院に直接支払をする手続きができなですし、「聞いていない病院だから、後から申請されても支払うことができません」と言われかねません。必ず、転院や新規の病院に通う場合には、保険会社に一方を入れてから通院を開始するようにしましょう。
また、転院回数が、あまりにも多い場合には、保険会社も本当に必要な治療であるかを疑って来る場合がありえます。転院の場合は必ず医師に紹介状を書いてもらってから転院をするか、セカンドオピニオンを受けたい場合には、保険会社にその旨を伝え、治療費を支払ってもらう言質を取ってから通院する方が良いでしょう。

2. 整骨院・接骨院の治療も請求できる?

ムチウチ症などの場合は、正直、整形外科に通うよりも、整骨院や接骨院、カイロプラクティックに通った方が、体が楽になる気がするから、整骨院等にも通いたいという方もいらっしゃると思います。
整形外科がきちんと治療をしていないわけではありませんが、痛みがある場合、整骨院や接骨院の先生が施術してくれるマッサージのような補完治療のほうが効くと言われる方は一定程度いらっしゃいます。

整骨院・接骨院とは柔道整復師という国家資格を持った人が施術行ってくれる場所を指しますが、整骨院・接骨院での治療費は、整形外科等の医師の治療も受けていれば、基本的に保険会社が支払ってくれます
これは、自賠責の保険金支払い基準に整骨院・接骨院の費用を支払う旨が規定されているからです。

整骨院・接骨院での治療をメインにされたい方もいらっしゃるかと思いますが、後遺障害を請求する場合には、医師が書いた「後遺障害診断書」が必要不可欠です。整骨院・接骨院での治療だけではなく、必ず、並行して整形外科等医師のいる病院での治療も継続する必要があります。

整骨院・接骨院の通院の際に気を付けていただきたいことがあります。
交通事故の治療費は、自由診療扱いにでき、また、保険会社が支払ってくれることを整骨院・接骨院は知っているため、高額な費用を保険会社に請求する場合があります。
通常そのような場合、保険会社が適正な値段で請求をするように整骨院・接骨院に交渉し、治療している本人の負担なしに終了することになりますが、まれに、差額を接骨院・整骨院が治療している本人に請求してくることがあります。保険会社も自由診療だからと言って、すぐに支払いを拒否するわけではありませんが、治療を受ける前にある程度、その整骨院・接骨院がどういう費用体系をとっているかは確認しておくべきです。

また、近年、鍼灸院やカイロプラクティックなど民間療法を受けたいという方がいらっしゃいますが、鍼灸院やカイロプラクティックは整骨院・接骨院と違って、医師からの指示や特段の事情がない限り、保険会社から治療費としての支払いはされませんので、すべて自腹で払うことになります。

3. 高額な費用がかかる治療。うけてもいいの?

医学の発達により、近年様々な治療が日本でも受けれるようになってきています。
それらの治療の中には、治療を受けることができるといっても費用がとても高額なものもあります。高額な治療でも「受ければ治りますよ」と言われたら、保険会社が治療費を支払ってくれるのであれば、治療を受けたいと思う方は多いのではないでしょうか?
一概には言えませんが、基本的に医師が必要だと言わない限り、自己負担になると思ってください。
昨今の医療技術の確認によって治療の方法は様々です。医師とじっくり話をしたうえで、治療方針を練り、治療を受ける前に保険会社に支払ってもらえる費用かを確認したほうが良いでしょう。必要であれば、医師から保険会社に連絡してもらうのも一つの手です。

直接の治療とは関係ありませんが、入院する場合に個室にするか大部屋にするか病院から聞かれるかと思います。保険会社が治療に関する費用は払ってくれるんだから、個室にしようと決めるのは危険です。
個室や特別個室と言われる病室を使用する際に発生する費用を「差額ベット代」と呼びますが、基本的に差額ベット代は個人負担であり、保険会社からの支払は認められません。
ただし、治療の重症度による医師の指示、又は、大部屋が空いていなかった場合に限っては保険会社からの支払可能な場合がありますので、個室を使用する前に一度保険会社に確認した方がいいでしょう。

余談ですが、治療に必要な松葉つえや車いす等の装具も請求できるのか気になる方もいらっしゃるかと思います。
こちらは医師が必要と認めた場合には、治療関係費として保険会社へ請求をすることが可能です。
装具が必要になった場合は、医師の指示に従い、装具の見積もりを出してもらい保険会社へ請求をしましょう。

4. 支払を拒否されるケース

保険会社もよっぽど変な請求でない限り、医師が「症状固定」という日まで、基本的には治療にかかった費用の支払拒否をすることはありませんが、支払いを拒否または一度立替えて欲しいと依頼して来るケースがあります。
それは、以下のようなケースです。

  • 過失割合が定まっていない事故の治療費
  • 交通事故と因果関係が怪しい怪我の治療費
  • 既往症である怪我の治療費

1つ目の「過失割合が定まっていない事故の治療費」というのは、過失割合がぎりぎりで被害者なのか加害者なのかが微妙になっている場合、もしくは複数の車が絡む事故で誰にどれだけ過失が付くかで争っているような場合などが考えられます。
通常、被害者の過失がたいして大きくなければ、何事もなく支払ってもらうことが可能ですが、一見被害者のように見えて、実際には加害者となる可能性があるような事故ですと、ひとまず立て替えてくれと言われる場合があります。
その場合は、必ず、診療報酬明細書等を手元に残しておきましょう。

2つ目の「交通事故と因果関係の怪しい怪我の治療費」というのは、車両などがたいして大きな被害を被っているわけでもないのに、長い間通院をしている場合、もしくは、事故後だいぶだってから通院を始めた場合などが考えられます。
保険会社はどのような事故であったかを把握するため、実況見分調書を取り寄せたり、事故現場までおもむいて調査をすることがあります。また、病院からは毎月診断書を取り寄せて確認しますし、本当にその治療が交通事故による怪我に必要な治療であるか見定めてから、治療費を支払います。そのため、少しでも気になる治療があれば疑問視され、支払いを拒否されることがありえます。事故による怪我であるならば、きちんと事故直後から病院に通い、それが事故による怪我であることを医師に認めてもらうことが大切です。

3つ目の「既往症である怪我の治療費」というのは、事故前にすでに通院を行っていた怪我に対する治療費のことを指します。
たとえば、事故の前から定期的に通っていた腰痛の治療であるとか、二事故・三事故していて、どれが原因で治療が必要になった怪我なのかがわからないような場合です。
事故と関係がないと認められた怪我に対しては、保険会社は一銭たりとも治療費の支払いはしてくれません。
ただし、事故前から治療していたものに関して、事故のせいで悪化したというような場合には、保険会社が支払をしてくれる可能性もありますので、医師と相談し、保険会社に掛け合って見るのも一つの手です。

万が一、支払拒否をされた場合、もしくは治療費を立て替えておいて欲しいと言われた場合、健康保険や人身傷害保険を使って通院することも可能です。
交通事故は健康保険が使えないと思われがちですが、使用することは可能です。
ただし、病院によっては、健康保険を使うことを拒む病院もありますから、一度その点を確認してから通院を開始することをおすすめします。

双方に過失がついている場合には、自身が加入している人身傷害保険を使うことも有益です。
いずれにせよ、保険会社から支払拒否をされた場合、又は、一度立て替えをしておいて欲しいと言われた場合、最終的に保険会社へ請求できるように、診療報酬明細書や調剤報酬明細書など治療にかかかった費用がわかるものをすべて捨てずに残しておきましょう。

5. まとめ

今回は治療費はどこまで請求できるかについて説明しました。

過失割合や交通事故との因果関係が争いになっている事故を除き、よほどの疑問を抱くような不可解な治療をしていない限りは保険会社が治療費の負担をしてくれます。
「症状固定」と医師が言うその日まで、きちんと通院し、満足のいく治療を受けるようにしましょう。

また、治療費の支払拒否や立替を言われた際には、後日保険会社へ請求できる可能性がありますので、診療報酬明細書や調剤報酬明細書等、治療にかかった費用についてわかる資料は必ず残しておきましょう。

保険会社が治療費を断固として支払ってくれず困るという場合には、一度弁護士に相談してみることも一つの手です。弁護士の交渉により、治療費を支払ってもらえる可能性もあります。

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